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《88》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(2)-2 息子

「何か?」

「イヤ、賢そうな顔立ちをしていると思っていたが、その年で席次の位置や順番まで身に付けているとはね、フフフ……」

そう中西さんに返事をすると、彼は机に置かれた書類らしき紙を手に取り一通り眺めた後、僕の目を見つめた。

「さて、太郎君。君について少し調べさせてもらったよ。〝幼くして天涯孤独の身となり、施設でも一人浮いた存在、しかし成績は学年で二位と優秀、年齢の割にどこか落ち着いたところがある〟……と」

それだけ言うと、その紙をファサと机に放り出した彼は、手を軽く合わせて組み、脚も少し気楽に伸ばした。その体勢のまま何分か長考した後、彼はおもむろに口を開いた。

「……君は、将来について考えたことはあるかね?」

突然のことで「は?」とポカンとした顔で返事をしたが、横のソファに座る中西さんから「ホラ、質問にはちゃんと答えなさい」と注意されたので、「いいえ、何も」と返した。

「そうか……」

すると再び彼は、先程の体勢に戻り瞳を閉じ、口を固く結んでしまった。何となく話かけてはいけない空気を感じ取り、僕も中西さんも互いに顔を見つめ合わせただけ。施設長室を何とも言えない沈黙が支配した。
耳に入るのは、窓の外で大雨が地面を激しく叩く音のみ。時計の針は四時半を指していたが、部屋の中が薄暗くなっているような気がした。
何の気なしに電気のスイッチを入れようと立ち上がろうとした中西さんと、ほぼ同じタイミングで築月氏が口を開いた。

「君はまだ子供だから分からないだろうが、児童養護施設とは難しいものでね……正直現状は芳しくないのだよ。その〝出身者のおよそ五分の一は高校を中退する〟やら〝就職率は著しく低い〟やら……しかも大学をちゃんと卒業出来るのは、およそ十パーセントを切っているのが現実だ。私はその原因が、施設に居続けることにあると思う。社会の関心が薄いためあまり問題視されないが、〝親が不在で成長する〟というのは余りに酷だ。人間が成長する一番の方法は経験を積むこと。しかし、それには段階がある。まずは家庭にて人間の基礎を習う、そして外に出ての実践だ。それを順に踏まなければ、その人はどこかでつまづいてしまう。例え、どんなに優秀でもだ。そこでだーー」

その瞬間、ドォーンという雷鳴が轟いた。
窓の外で雷鳴が空を切り裂くかのような、音の響きは室内にも響いていたが、僕には彼の言葉がしっかりと耳に入った。

「太郎くん……私の〝息子〟になる気はないかね?」

稲妻に照らされた彼の言葉は、怪奇的であり美しくもあり、僕を誘い出す悪魔のようにも見えて恐ろしくもあった。

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プロフィール

Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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