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《77》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(1)ー1 彼女

学校から徒歩で二十〜三十分程の住宅地の片隅に、僕の住むアパートの「最礼荘」(もれいそう)はある。見た目はかなり寂れてはいるが、この辺りではかなり格安で住めるため、全ての部屋が埋まっている。
そのアパートの一室、二階の端っこに僕は住んでいる。ここに居を構えたのは、大学生のとき。少しでも大学に近い場所に住みたかったことと、親離れしたかったことが理由だ。別に育ての親を嫌ってるわけじゃない。僕が今日まで生きてこられたのは、あの人達のおかげだ。感謝してもしきれない。
だからこそ、早く一人前になりたかったのだ。

◆◆

「…………んぅ」

夢から覚めた僕の目に最初に飛び込んできたのは、紙に書かれた大量の文字だった。
数秒置いて瞳をキョロキョロと動かし、ここが僕の部屋であることを確認すると、ゆっくりと身体を起こした。どうやら、昨日学校で終わらなかった仕事を自宅に持ち帰り、続きを行っていた最中に眠りに落ちてしまったようだ。ペンで書かれた書類を確認してみると、後半の文字は潰れたミミズのようでとても読めたものじゃない。僕はハァと溜め息をつき、時刻を確認しようとしたところで、椅子の脚近くに落ちていたタオルケットを発見した。そういえば、さっき上体を起こしたときに、身体に何か被さっていたものがハラリと落ちるような音がした。

(ひょっとして、シミ姉が?)

そこでふと気付く。
デジタル時計のパネルは六時半を表示している。締め切られたベージュのカーテンの隙間から、部屋の中を照らすには十分な明かりが漏れていることから今が朝だということが分かる。

(シミ姉……まだ寝てるのかな?)

僕は三歳違いの姉と、この部屋に同居している。スペースが狭いので寝室は一緒、勿論布団は別だ。
今、彼女は就職はせずに、我が家の家事全般を請け負ってくれている。いつもギリギリまで寝ている僕とは違い、彼女は誰よりも早く起き、朝ご飯の準備に取り掛かる。僕が寝ぼけ眼を擦りながら食卓に着くと、エプロン姿でキッチンに立つ彼女に咲きたての花のような笑顔で微笑みかけられる。そうして一日が始まる。
それは休日も変わらない。いつもなら、この時間には起きているはずなのだ。

(ていうか……大丈夫なのか?)

彼女も疲れているのだ、寝かせてあげようーーと思ったが、それが間違った判断だということに即座に気付いた。
僕は急いで彼女を起こそうと立ち上がり、布団の敷かれた部屋の木製の引き戸を開けようとした。しかし、その前に戸は横にスライドし、こっちの部屋に入ろうとした〝彼女〟と鉢合わせする形になった。

「わ」

「……ヒャッ!? ……あ、ゴ、ごめん!! 太郎、おはよ……」

予想外の出来事に少しだけ驚いた声を上げたが、それが僕と分かるなり、おっとりとした笑顔を浮かべた。
件の姉・志美子だ。寝起きらしく長い髪は少しボサついているが、間違いなく美人の領域に入る顔立ちをした女性。いつもは、包みこむような笑みを浮かべる彼女だが、今日はその整った顔が微妙に歪んでいた。

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プロフィール

Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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