《119》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(5)ー7 噴出
- 2017/09/02
- 00:52
僕は彼女の肩に手をかけ、おずおずと顔を上げた彼女と目を合わせた。出来るだけ穏やかな表情で、そして静かに声をかけた。
「ひとまず部屋に入ろう? 大丈夫、怒ってないから」
彼女は不安げに唇を揺らしながら、赤く晴らした瞳で僕を見つめてくる。何となく気まずい空気が流れたが、彼女は目を逸らして俯くとポツリと言った。
「ゴメン。……カギ無くしちゃったの」
それで全ての合点がいった僕は、急いで自分のカバンをまさぐりカギを探した。
どこに行っていたのかは知らないが、シミ姉は部屋のカギを無くして入ることが出来なかった。それで僕が帰宅するまで尿意を我慢することになったが、堪えることが出来なかったのだ。近くの公園のトイレは汚くて使いたくないと言っていたが、十分くらい歩いたところにコンビニがあることは知っているはず。もしかして、歩くことも出来ないくらい切迫詰まっていたのだろうか。
カギを見つけた僕は、部屋のドアを開けて玄関先に荷物を置いた。靴を脱いで部屋の中に入る。
「太郎」
狭い玄関のすぐ後ろからシミ姉の呼ぶ声が聞こえた。振り返った瞬間に、僕の身体は彼女にあっという間に抱きしめられた。静止するのも聞かず、僕の背中は部屋の壁に押し付けられる。
「太郎……遅いよォ!! ……いつまで待たせんのよォ……!!」
背の高いスレンダーな彼女に抱きしめられる、平均身長以下の僕。必然的に顔は、柔らかい肉の盛り上がりへと誘われることになる。
いつもなら、彼女を落ち着かせつつ身体を引き剥がそうと躍起になっただろう。しかし、今の僕にはそれが出来なかった。
「太郎……ウゥ……怖かった……怖かったよォ……」
下駄箱の脇にかけた姿見に、可哀想なくらいオシッコでグショグショに濡れた染みが浮かび上がった、スカートの後ろ姿が映される。
彼女はどれだけの間、ここで待っていたのだろう。良い年齢にもなって部屋に入れずお漏らし。誰かに見られるかもしれない、でも逃げることも隠れることも出来ない。僕が帰ってくるまで一人ぼっちで待つしかない。その間どれだけ不安で寂しかったのか。それを思うと、僕は自己嫌悪に陥りそうになった。
「大丈夫、シミ姉は悪くないよ。僕がいつも通り早く帰ってこれが良かったんだ。それをこんな時間になるまで……本当にゴメン」
おそらく彼女はドアにもたれかかりながら、その場で全てぶちまけてしまったのだろう。勢いよく噴出されたオシッコは周りに飛び散り、彼女は床を叩く恥ずかしい音を聴きながら、止められないそれを出し続けたのか。スカートの後ろの方まで濡れているのは、漏らした後に脱力して水たまりの上に座り込んでしまったからか。その後ずっと、僕のことを一人で待ち続けていたなんてーー。
「違うよ、これ全部私のせい。太郎は何も悪くない。カギ失くしたのも私、帰りにコンビニとかに寄らなかったのも私、汚くてもいいから公園のトイレに行かなかったのも私、一歩も動けなくなるまでバカみたいに我慢したのも私、全部全部私のせい。本当にゴメン。もし大家さんに染みのことを指摘されたら正直に言って。〝またウチのダメな姉が、お漏らしをしでかしました〟って。約束通り、今日からスッポンポンで生活する。だから許して、お願い許して……」
僕の言葉を聞いた彼女は瞳を潤わせながら、無言のまま首を横に振り続ける。口から零れるのはやけくそにも似た、自分を貶める言葉ばかり。
「ひとまず部屋に入ろう? 大丈夫、怒ってないから」
彼女は不安げに唇を揺らしながら、赤く晴らした瞳で僕を見つめてくる。何となく気まずい空気が流れたが、彼女は目を逸らして俯くとポツリと言った。
「ゴメン。……カギ無くしちゃったの」
それで全ての合点がいった僕は、急いで自分のカバンをまさぐりカギを探した。
どこに行っていたのかは知らないが、シミ姉は部屋のカギを無くして入ることが出来なかった。それで僕が帰宅するまで尿意を我慢することになったが、堪えることが出来なかったのだ。近くの公園のトイレは汚くて使いたくないと言っていたが、十分くらい歩いたところにコンビニがあることは知っているはず。もしかして、歩くことも出来ないくらい切迫詰まっていたのだろうか。
カギを見つけた僕は、部屋のドアを開けて玄関先に荷物を置いた。靴を脱いで部屋の中に入る。
「太郎」
狭い玄関のすぐ後ろからシミ姉の呼ぶ声が聞こえた。振り返った瞬間に、僕の身体は彼女にあっという間に抱きしめられた。静止するのも聞かず、僕の背中は部屋の壁に押し付けられる。
「太郎……遅いよォ!! ……いつまで待たせんのよォ……!!」
背の高いスレンダーな彼女に抱きしめられる、平均身長以下の僕。必然的に顔は、柔らかい肉の盛り上がりへと誘われることになる。
いつもなら、彼女を落ち着かせつつ身体を引き剥がそうと躍起になっただろう。しかし、今の僕にはそれが出来なかった。
「太郎……ウゥ……怖かった……怖かったよォ……」
下駄箱の脇にかけた姿見に、可哀想なくらいオシッコでグショグショに濡れた染みが浮かび上がった、スカートの後ろ姿が映される。
彼女はどれだけの間、ここで待っていたのだろう。良い年齢にもなって部屋に入れずお漏らし。誰かに見られるかもしれない、でも逃げることも隠れることも出来ない。僕が帰ってくるまで一人ぼっちで待つしかない。その間どれだけ不安で寂しかったのか。それを思うと、僕は自己嫌悪に陥りそうになった。
「大丈夫、シミ姉は悪くないよ。僕がいつも通り早く帰ってこれが良かったんだ。それをこんな時間になるまで……本当にゴメン」
おそらく彼女はドアにもたれかかりながら、その場で全てぶちまけてしまったのだろう。勢いよく噴出されたオシッコは周りに飛び散り、彼女は床を叩く恥ずかしい音を聴きながら、止められないそれを出し続けたのか。スカートの後ろの方まで濡れているのは、漏らした後に脱力して水たまりの上に座り込んでしまったからか。その後ずっと、僕のことを一人で待ち続けていたなんてーー。
「違うよ、これ全部私のせい。太郎は何も悪くない。カギ失くしたのも私、帰りにコンビニとかに寄らなかったのも私、汚くてもいいから公園のトイレに行かなかったのも私、一歩も動けなくなるまでバカみたいに我慢したのも私、全部全部私のせい。本当にゴメン。もし大家さんに染みのことを指摘されたら正直に言って。〝またウチのダメな姉が、お漏らしをしでかしました〟って。約束通り、今日からスッポンポンで生活する。だから許して、お願い許して……」
僕の言葉を聞いた彼女は瞳を潤わせながら、無言のまま首を横に振り続ける。口から零れるのはやけくそにも似た、自分を貶める言葉ばかり。