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《48》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(9)ー3 命令

曾相操華(そそうそうか)。それが彼女の名前。
物心ついたときからいつも隣にいた、いわゆる幼馴染というヤツで、彼女は当時から美しかった。幼稚園で既にそのダイヤの原石は輝いており、同級生は勿論のことその保護者からも羨望の眼差しを集めていた。さらにそれを鼻にかけるわけでもなく、協調性があり頭の切れる娘でもあった。それは小学生になっても変わらず、学級委員を始め、生徒会に何度も任命されていた。絵に描いたような優等生ーーそれが、彼女の表面上の美しさ。猫をかぶるという技術を早々に熟知し、良い子を演じ切った彼女の手腕は見事といえよう。

『タロウのくせに、私のことを忘れかけた罰よ、土下座しなさい。三十分、いえ一時間。そして私のことを褒め続けなさい、同じ言葉は使っちゃダメよ。被ったら十分追加。分かった?さぁ早く!』

「…………」

これがもう一つの彼女の姿。自分が周りとは違う、特別な人間であると思い込み、いつも彼女の側にいた僕を下僕のように命令してこき使う、まさにメルヘン童話の悪役のような女王様。周りへの影響力が強く、何かと注目を集めていた彼女は、いつしか自己中心的で頑固で上から目線の女の子になってしまったのだ。
それでも当時の僕は、優柔不断な自分とは違い、自分の意地で物事を切り開く彼女を好きだったし尊敬もしていた。彼女は友達は多かったが、取り巻きのようなものは存在しなかったので、必然的に僕は彼女の家来のような存在となった。ときに凄いムチャ振りをされることもあったし、失敗すると容赦なくオシオキされた(その殆どが、可愛らしいものだったが)。しかし、基本的には彼女のご機嫌取りさえしておけば良かったので、上手くいくと頭を撫でられたり、頬にキスしてもらったこともあった(皆の前で)。素直に嬉しかった、だって彼女が好きだったから。
しかし、破局は突然訪れた。忘れもしない六年生のあの日、彼女は僕の前から姿を消した。噂では、両親が自己破産して夜逃げ同然のように街を出て行ったとか。彼女とはそれっきり。消したいけど、忘れられない苦い過去。後悔だらけの思い出。女の子に顎で使われていたという事実も勿論恥ずかしいが、初恋の女の子とあんな形で別れるなんて思っていなかった。

『ちょっと! 何無視してんのよ! 早く土下座しなさいよ、私の言うこと聞けないわけ!?』

そして、彼女は今僕の目の前にいる。あの頃と全く変わらない性格と姿で。
僕の一番新しい記憶の、子供の頃と〝全く同じ体型〟のままで。

『……まぁ、イイわ。それよりもタロウ、何か悩んでるっぽいわね。言わなくても分かるわ。タロウ、悩むとすぐそんな顔するから』

そう言うと、楽しそうにフフフと笑みを浮かべる。
彼女は人が困っている姿を眺めるとき、いつもこんな蠱惑的な顔をする。解決出来るように手助けすることもあったが、それが僕のときはまず放ったらかしだった。

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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