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《49》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(9)ー4 本心

『一つ助言してあげる。あなたは心の底で、どうして自分がこんな目に合わなくちゃいけないのか、そう思ってるはずよ。今の状況、少しは責任があるかもしれないと思う反面、一番悪いのは別にいるのに、とも考えているはず。だから納得いってないんでしょう?』

「…………」

彼女は全て分かっていた。いつもそうだ。彼女は、状況把握能力に長けており、誰かに聞かずとも何でも、全てを分かっているのだ。そして今も、僕の心情を的確に当ててみせた。
僕は何も言い返すことが出来ず、そっぽを向いた。彼女の全てを見通しているような眼光と真正面から対峙したくはない。しかし、彼女はそんな僕にお構いなしに話を続ける。

『逃げちゃえばいいのよ。そうよ、あなたは悪くないわ。悪いのは、正義面を振りかざして周りを見ようとしないあなたの同期や、身勝手な理由で女の子を辱しめたゲス野郎に、すぐ保身に走ろうとするあの雌豚共よ。明日は病気だって言って休んじゃえばいいわ。そうすれば、勝手に……』

「うるさい」

僕は彼女に一切目を向けず、呻くように呟いた。
まるで耳元で囁かれているよな、恐ろしいくらい真っ白で、それなのに真っ黒な言葉達。僕のことは何も知らないくせに知った気でいる、そんな口ぶり。しかし、彼女の言葉は見事なまでに心の的を得ていた。
決して口には出さなかった本心。生徒らを束ねる担任として、絶対に見せてはいけない弱さ。その全てを彼女は見通していた。
一体何なんだ。突然現れたと思ったら。本当ならもっと色々話したいのに。
今までどこに行っていたの?
どうして何も言ってくれなかったの?
……まだ、僕のことを許せないでいるの?
僕は憮然とした態度をわざと出して、彼女をキッと睨めつけた。

「…………!」

そこには何もなかった、誰もいなかった。ただ、年季の入ったジャングルジムが物寂しくそこにあるだけだった。周りの風景も先程と何も変わっていない。
ここにいるのは、ベンチに座った自分一人。
彼女はどこに行ったのだ。話している最中に、徐々にこの場を離れて行ったのか。確かに、彼女から目を背けてはいたが、そんな数分で? 久しぶりに会えたのに? 会いたくても会えなかった、初恋の人だったのに? こんな形で? もう本当にこれで最後だったら?
そう考えると、自然に身体が動いていた。ひょっとして、すぐ近くの植え込みのどこかに隠れてるんじゃないか。そう思い、覗きこもうとした瞬間。

「ーー…………太郎ッ!!」

砂利道を走ってくる足音が聞こえたと思ったら、すぐに目の前に呼吸を荒げた気配が立った。

「シミ姉? どうしたの……」

目に飛び込んできたのは、膝に手をつき息を切らす僕の姉。彼女は顔を上げると、キッとした表情で僕を睨めつけた。さっきの僕と同じように。

「どうしたのって……太郎の帰りが遅いから……私心配したんだよ!! いつもの時間になっても来ないし、メールも電話もないし、もしかしたら何か事件にでもあったのかなって……」

それを聞いて思わず腕時計を見ると、時刻は既に十一時を越えていた。学校を出たのが九時半ちょっと過ぎ。ここまでの帰路時間を考慮しても、ここに一時間程いたことになる。人間頭がいっぱいになると、時間感覚を失くすというがまさにそれだ。

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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