《75》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」 プロローグ 目撃 〜Witness〜 (3)
- 2017/06/09
- 00:48
「へへ……やっちゃった。あんまし……見んなよ、恥ずいよ……」
目の前が涙で滲んでいくのを感じながら、私は舌をペロッと出しながら、渇いた笑顔をコイツに向けた。こんなので誤魔化せるわけないのは、私でも分かる。それでも、それでも、それでも私はーー。
「シミ姉、早く入って」
どれくらい時間が経ったのか分からない。もしかしたら一瞬だったのかもしれないが、私の義弟ーー太郎はオシッコで汚れた私の手のひらを掴むと、無理やり部屋の中へと引っ張った。
(あ……ヤだ……)
オシッコで著しく濡れた私の両手。初めの噴射を受け止めた、特に強い臭いを放っている手を掴まれ、私はまた頬が熱くなった。
二人共室内に入ったことを確認すると、太郎は扉の鍵をかけ、私に向き直った。
「シミ姉……どうしたの?」
状況がいまひとつ飲み込めない、戸惑いと私のことを心配してくれているような表情が入り混じった、そんな顔付きで私の瞳をジッと見つめる。
こんな私でも心配はしてくれる。
勝手な思い込みかもしれなかったが、思わず心が動く。それでも私はプイと顔を横に向け、可愛くない悪態をついた。
「う、うるせぇな……さっき言ったろ。ションベン漏れちまった……間に合わなかったんだよ。……わ、悪ぃかよ!!」
失敗を見られてしまい、穴があったら入りたい恥ずかしさ。コイツの優しさをちゃんと受け止められない自分が、私はますます嫌いになった。一人で勝手に自己嫌悪に陥っていると、太郎は私に背を向けて、奥の部屋へダダダと駆けて行った。
私はその後姿を静かに見送った。
(もう……ダメかもな……)
今度は心がズキンと痛んだ。しかし、不思議と涙はない。もしかして、遅かれ早かれアイツに嫌われることは分かっていたのかも。次にヤツの口から出てくるのは、漏らしたことへの蔑みの言葉か。それとも、臭い汚いといった侮蔑の言葉か。いずれにせよ、私の心が深くえぐられるのは間違いない。
すると、太郎は沢山のタオルを手に戻ってくると、玄関からバスルームへ道しるべのように一枚ずつ敷いていった。そして、再び私の手を優しく握る。
「……え?」
「いつまでも濡れたままだと、身体に悪いよ。お風呂で洗ってて。玄関は僕が掃除しておくから」
そう言うと、太郎はキッチンペーパーとタオル数枚を手に、バタンと扉の向こう側に消えた。
(……太郎)
残った私は、その場を動くことが出来ずうずくまってしまう。そして、溢れ出る涙を堪えるために、オシッコまみれの両手で顔を覆った。
(……私、私やっぱり……アイツのこと……)
溢れ落ちる涙と、手のひらのオシッコ。
二つとも私から生まれた液体、でも全然違うもの。
前者は、人によっては美しいものとされているが、後者は一般的に汚いものとされている。
その二つが私の手のひらで混ざり合っていく。
ーー彼らは一体、何色に染まるのだろう。
目の前が涙で滲んでいくのを感じながら、私は舌をペロッと出しながら、渇いた笑顔をコイツに向けた。こんなので誤魔化せるわけないのは、私でも分かる。それでも、それでも、それでも私はーー。
「シミ姉、早く入って」
どれくらい時間が経ったのか分からない。もしかしたら一瞬だったのかもしれないが、私の義弟ーー太郎はオシッコで汚れた私の手のひらを掴むと、無理やり部屋の中へと引っ張った。
(あ……ヤだ……)
オシッコで著しく濡れた私の両手。初めの噴射を受け止めた、特に強い臭いを放っている手を掴まれ、私はまた頬が熱くなった。
二人共室内に入ったことを確認すると、太郎は扉の鍵をかけ、私に向き直った。
「シミ姉……どうしたの?」
状況がいまひとつ飲み込めない、戸惑いと私のことを心配してくれているような表情が入り混じった、そんな顔付きで私の瞳をジッと見つめる。
こんな私でも心配はしてくれる。
勝手な思い込みかもしれなかったが、思わず心が動く。それでも私はプイと顔を横に向け、可愛くない悪態をついた。
「う、うるせぇな……さっき言ったろ。ションベン漏れちまった……間に合わなかったんだよ。……わ、悪ぃかよ!!」
失敗を見られてしまい、穴があったら入りたい恥ずかしさ。コイツの優しさをちゃんと受け止められない自分が、私はますます嫌いになった。一人で勝手に自己嫌悪に陥っていると、太郎は私に背を向けて、奥の部屋へダダダと駆けて行った。
私はその後姿を静かに見送った。
(もう……ダメかもな……)
今度は心がズキンと痛んだ。しかし、不思議と涙はない。もしかして、遅かれ早かれアイツに嫌われることは分かっていたのかも。次にヤツの口から出てくるのは、漏らしたことへの蔑みの言葉か。それとも、臭い汚いといった侮蔑の言葉か。いずれにせよ、私の心が深くえぐられるのは間違いない。
すると、太郎は沢山のタオルを手に戻ってくると、玄関からバスルームへ道しるべのように一枚ずつ敷いていった。そして、再び私の手を優しく握る。
「……え?」
「いつまでも濡れたままだと、身体に悪いよ。お風呂で洗ってて。玄関は僕が掃除しておくから」
そう言うと、太郎はキッチンペーパーとタオル数枚を手に、バタンと扉の向こう側に消えた。
(……太郎)
残った私は、その場を動くことが出来ずうずくまってしまう。そして、溢れ出る涙を堪えるために、オシッコまみれの両手で顔を覆った。
(……私、私やっぱり……アイツのこと……)
溢れ落ちる涙と、手のひらのオシッコ。
二つとも私から生まれた液体、でも全然違うもの。
前者は、人によっては美しいものとされているが、後者は一般的に汚いものとされている。
その二つが私の手のひらで混ざり合っていく。
ーー彼らは一体、何色に染まるのだろう。
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