《98》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(3)ー7 渦中
- 2017/07/21
- 00:32
前述した〝とある事件〟の、僕は渦中にいた。
しかし、その原因……というか、全てのいきさつとなったのは、僕のクラスの女子生徒・桃瀬楽久美の授業中の失敗だった。
1ー3組のクラス委員であり、全体のまとめ役であった桃瀬さんは、絵に描いたような優等生タイプで、責任感も強く、何事も率先して動く真面目な女子生徒だった。
しかしつい先日、彼女は授業中にありえない醜態を晒してしまったのだ。
生理現象、つまり人間なら誰にも起こりうること。それが尿意。授業中に催してしまったのであれば、手を挙げればいい。それだけの話だ。
しかし、思春期特有の自意識がそれを阻んだのか、はたまた授業を止めてはいけないという委員長としての責任感が躊躇したのか。彼女はそれを訴えることが出来ず、さらに授業終了までそれを抑え込むことが出来なかった。
つまり、〝お漏らし〟をしてしまったのだ。
その後、暫くの間彼女は周りの生徒から距離をとられ、自身の不甲斐なさをギリギリを追い込むことになった。すんでのところで自分を保つことが出来たが、今もまだ尾を引いているところが見られる。
……そんな彼女の下着が、盗まれただって。
「三週間程前に失敗したときは常備してあった下着に履き替えてもらったけど、後日それを念入りに洗って、新しい下着まで買って返しに来てくれたの。私は彼女の下着を返そうとしたけれど、彼女は恥ずかしそうに受け取るのを拒んだわ。そちらで処分してくれ、ってね。もう一枚は、ついこの前の全校集会のときのものよ。やっぱり彼女は、自分の物を持って帰ろうとしなかった。捨てるのもなんだったから、何となく常備用と並べておいたんだけど……まさか、盗まれるなんてね」
矢行先生は、自分の失態に腹を立てている様子だった。こんなに憤慨する彼女も珍しい。
「間違いないんですか?」
「常備用のは〝保健室〟と書かれてあるの。それに、基本は飾り気のない綿製品だから。〝見たことある〟から分かるでしょ?」
最後の一言を、彼女は意味ありげに言った。それを聞いて僕は、一瞬で顔が熱くなる。僕の反応に彼女は満足気に微笑むが、すぐに真剣な顔付きに戻る。
「まさか、覗く人はいないと思って。常備用と一緒にしておいたのが迂闊だったわね。だれが見ても一目瞭然だもの。飾り気のない同じ種類の綿パンティの列の中に、女の子らしくて可愛らしい花柄の薄ピンクの下着が混ざってるのよ。事情は知らなくても男ならそそられるでしょうね」
さり気なく桃瀬さんの下着の種類をバラしてしまう彼女に、僕は困惑した表情を向けた。彼女はその反応の意味が分からなかったようだが、数瞬のうちに気付いた。
「あー……そっか、タロウは彼女の〝お着替え〟は手伝ってなかったもんね。そっかー……そうだったよねー……ゴメンね、今の忘れて」
両手を祈るようにパチンと合わせて、たいしたことないといった感じで謝る。
しかし、僕の脳裏には一つの光景が浮かびつつあった。
しかし、その原因……というか、全てのいきさつとなったのは、僕のクラスの女子生徒・桃瀬楽久美の授業中の失敗だった。
1ー3組のクラス委員であり、全体のまとめ役であった桃瀬さんは、絵に描いたような優等生タイプで、責任感も強く、何事も率先して動く真面目な女子生徒だった。
しかしつい先日、彼女は授業中にありえない醜態を晒してしまったのだ。
生理現象、つまり人間なら誰にも起こりうること。それが尿意。授業中に催してしまったのであれば、手を挙げればいい。それだけの話だ。
しかし、思春期特有の自意識がそれを阻んだのか、はたまた授業を止めてはいけないという委員長としての責任感が躊躇したのか。彼女はそれを訴えることが出来ず、さらに授業終了までそれを抑え込むことが出来なかった。
つまり、〝お漏らし〟をしてしまったのだ。
その後、暫くの間彼女は周りの生徒から距離をとられ、自身の不甲斐なさをギリギリを追い込むことになった。すんでのところで自分を保つことが出来たが、今もまだ尾を引いているところが見られる。
……そんな彼女の下着が、盗まれただって。
「三週間程前に失敗したときは常備してあった下着に履き替えてもらったけど、後日それを念入りに洗って、新しい下着まで買って返しに来てくれたの。私は彼女の下着を返そうとしたけれど、彼女は恥ずかしそうに受け取るのを拒んだわ。そちらで処分してくれ、ってね。もう一枚は、ついこの前の全校集会のときのものよ。やっぱり彼女は、自分の物を持って帰ろうとしなかった。捨てるのもなんだったから、何となく常備用と並べておいたんだけど……まさか、盗まれるなんてね」
矢行先生は、自分の失態に腹を立てている様子だった。こんなに憤慨する彼女も珍しい。
「間違いないんですか?」
「常備用のは〝保健室〟と書かれてあるの。それに、基本は飾り気のない綿製品だから。〝見たことある〟から分かるでしょ?」
最後の一言を、彼女は意味ありげに言った。それを聞いて僕は、一瞬で顔が熱くなる。僕の反応に彼女は満足気に微笑むが、すぐに真剣な顔付きに戻る。
「まさか、覗く人はいないと思って。常備用と一緒にしておいたのが迂闊だったわね。だれが見ても一目瞭然だもの。飾り気のない同じ種類の綿パンティの列の中に、女の子らしくて可愛らしい花柄の薄ピンクの下着が混ざってるのよ。事情は知らなくても男ならそそられるでしょうね」
さり気なく桃瀬さんの下着の種類をバラしてしまう彼女に、僕は困惑した表情を向けた。彼女はその反応の意味が分からなかったようだが、数瞬のうちに気付いた。
「あー……そっか、タロウは彼女の〝お着替え〟は手伝ってなかったもんね。そっかー……そうだったよねー……ゴメンね、今の忘れて」
両手を祈るようにパチンと合わせて、たいしたことないといった感じで謝る。
しかし、僕の脳裏には一つの光景が浮かびつつあった。