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《104》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(3)ー13 目的

(何だ、トイレに行きたかったのか)

何か感じ取った僕の視線に気付き、彼女は立ち止まった。恥ずかしそうに手で頬をかいてみせる。

「あー……アハハ、別に今は着いてこなくても良かったのになー。ちょっと外の風に当たっていたら催してきちゃってさ。でも、ありがとうね。詳しいことはまた明日にでも話そうか。じゃ」

それだけ言うと、彼女は逃げるようにトイレの扉を閉めてしまった。
勝手に連れ回しておいて素っ気ないな、と苦笑混じりに僕は呟く。どうしたものかと思ったが、ここにいても仕方ないし、職員室に戻ることにした。女性からしても、トイレから出たところを男性に見られたくはないはず。
それにしても、矢行先輩はスゴイ。僕には絶対考えつかない答えを導き出し、それをすぐに実行に移す。決して周りの意見に左右されない。ああいう人を自立した大人というんだろう。

(それにしても、驚いたな。まさか自分の気付かないうちに、謎の不審者が学校に出入りしていたなんて…………ン?)

生徒や先生ともすれ違うことのない一人だけの廊下。自分の足音だけが変に大きく聞こえる中、僕はフッと立ち止まった。足音の動きも消える。脳裏に妙な考えがよぎったのだ。

(ちょっと待てよーーもし窃盗犯が本当に外部の人間なら、ソイツは危険を冒してまで学園の中に入って、一年生の教室から財布とスマホと勉強用具だけを盗んだっていうことになるよな……それって、非効率過ぎるんじゃないか?)

それに学校なら近辺にいくつかある。公立の学校が殆どだから、そちらの方が警備の手は緩いし、忍びこむのならまだ簡単そうだ。なのに犯人はこの学園を選んだ。それだけのリスクを冒してまで侵入したというのに、盗んだものが財布二個にスマホ一台だけなんておかしい。盗まれた財布が高価なものだったとか、それとも。
ドクドクと心臓の動きが早まるのが分かる。とんでもない不安感が胸を締め付ける。声すらも出せず、動くことも出来ない。
何だ、何かが出かかっているのに、それが何か分からない。考えろ、考えるんだ。

(犯人の目的は本当に窃盗だったのか? もしかして、本当は別に目的があったんじゃないのか? そうだ、犯人には本当の目的があって、それに気付かれないために、別に事件を起こしてカムフラージュしたとしたら……何だ? 犯人の本当の目的は何だ?)

そのとき、頭に閃くものがあった。
つい最近もニュースで見たことがあった。近年全国の学校で増加している事件、トラブル。それはーー。

「……翔姉ェッ!?」

僕はギョッとした声を出して、弾かれたように廊下を駆け出した。
確証はなかった。しかし、嫌な予感がする。こういうときの予感はよく当たる。良い意味でも悪い意味でも。
数秒も立たぬうちに、職員トイレの前に着いた。赤いピクトグラムが僕の前に立ち塞がり一瞬躊躇したが、今はそんなこと考えてられない。勢いよくトイレの扉を開けると、独特の芳香剤の香りと沢山のピンクのタイルが僕を出迎えた。室内はそれほど広くなく、壁の一面には二人分の洗面台が設置されており、もう一方の壁側には個室のボックスが同じく二つあった。そのうちの一方の扉が閉じられている。

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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