2ntブログ

記事一覧

《108》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(4)ー1 白紙

高級車って対面式なんだな。それが僕の最初の感想だった。
お抱えの運転手に運転を任せ、自分は後部座席に乗るような人だ。さぞ内装も凄いんだろうなと思っていたが、広々とした空間に二人ずつ対面式の座席とは思っていなかったので、乗車する前から既に驚いていた。肘掛けのところには、ワイングラスも取り付けられており、仕事で使用するのかPC等も装備されている。またエンジン音や路面の振動も少ないく、周りの風景が進んでいると錯覚してしまいそうだった。

「普段はあまり使わない車だが、じっくり話をしたいときや、大切な客人をお迎えするときにはこの車を使うのさ。時代錯誤な言い方かもしれないが、〝男の価値は車で決まる〟というのが私のモットーの一つだからね」

緊張で表情を上手くつくれず、背筋を伸ばしじっと座っている僕を値踏みするように見つめながら、緩やかな物腰で座席に座る築月見栄晴氏。
今日も彼は前回同様、高級そうなスーツに身を包み込んでいるが、目を見張る内装にその姿は見事にマッチしており違和感は全くなかった。逆に、中西さんが特別にと用意してくれた子供用の正装服のセンスが今ひとつで、むしろ僕の方が浮いていた。

「さて、太郎君。改めて今回の話、引き受けてくれありがとう。私としても大変喜ばしいことだよ」

彼は膝に手をポンと置き姿勢を正すと、僕の目を見つめながらそう言ってきた。真剣な眼差しで。
途端に車内に緊張が走った。

「しかし、誤解のないように今のうちにハッキリと言っておく。君には少々酷な言い方かもしれないがーー」

先程から緊張感はあったが、それはあくまで僕が雰囲気に飲み込まれていただけの話。
今は全く違う。何というか、上手く言えないけど、本能的に彼の話を聞き逃してはいけないと、改めて背筋をピシリと伸ばした。

「紙の上では、私と君は親子だ。私のことは何と呼んでくれても構わない。しかし、今はまだ私は君を〝息子〟と呼ぶつもりはない」

途端に空気が冷えた。一瞬の沈黙。時が止まったかのように、僕の思考も止まった。
しかし、そんな僕にお構いなしに彼は立派に蓄えられた優美な口髭を動かしながら言葉を発し続けた。

「前にも話したかもしれないが、私は自分の後継者が欲しいのだ。自分の仕事や意志を引き継いでくれるだろう、後継者をね。君は確かに私が選んだ。しかし、それはあくまでも〝未来への投資〟と〝可能性〟としてだ。もし君が、私の考えや期待に添えられないと判断した場合、この関係は白紙に戻す。……意味は、分かるよね?」

唾を飲み込んだ。
彼の問いかけーーいや言葉は、僕の身体を硬直させるのには十分だった。
この築月見栄晴という男は、人の上に立つ者だけあって常に穏やかな表情と微笑みを浮かべている。しかし時折、心の内を垣間見せる瞬間がある。僅かな表情、言葉、そしてこの人自身が放っている圧力。
それは、まだ小学生六年生の僕には恐ろし過ぎる者だった。まるで人間以外の何かを相手にしているような恐怖。
彼の前では、誰も首を横に振ったりはしないだろう。

ーーまぁ、僕は振るつもりは全くないけど。

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

Twitter
https://twitter.com/mashiroirosymp1