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《114》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(5)ー2 最低

何を言ってるんだ、と言わんばかりに敷島先生は苦笑する。その反応に矢行先生は苛立ちを覚えたようで、敷島先生を睨め付ける。しかし、敷島先生はそんなのどこ吹く風といった感じで言葉を続けた。

「他に何か理由が存在しますか? トイレという、いわば人間が最も気を許してしまう場所で、人目につかないように仕掛けられた隠しカメラ、アングルは間違いなく女性の大切な場所を狙いうち……これを盗撮と言わずに何といいますか?」

自信に満ちた力強い面持ちで、まるで演劇のようにハッキリした口調だった。彼に圧倒された矢行先生は、眉間をつまみ溜め息をついた。

「……とにかく、もうこれは私達だけでどうこう出来る問題ではないわね」

ひとまず納得した様子の彼女は、敷島先生からカメラを受け取ると(奪い取ると)、真剣な表情で呟いた。

「盗難被害だけだったら、厳重注意くらいでまだ済ませられたかもしれない。でも、盗撮はそうじゃないわ。もし、この犯人が本当に学内にいて、しかも生徒だったのとしたら……その子にハッキリと教えてあげる必要がある。〝あなたがしたことは、人間として最低なこと〟だってね」

矢行先生は、静かに思いをこめるような低い声で言った。怒りに燃えるその目を見た瞬間、思わずゾッと産毛が立った。反対に敷島先生は、盗難が発覚した瞬間と変わらぬ反応をしている。
やはりこういった問題は、男女で大きく考え方が違うものなのだろうか。

「……で、どうするんですか?」

敷島先生は、彼女をまるで観察するかのような目で眺めていた。矢行先生は彼を一瞥だけすると続けた。

「校長と副校長に報告して、再度職員会議を開いてもらいましょう。そして今学校に残っている先生方全員で、校内を調べ尽くすのよ。もしかして、まだカメラは他にもあるかもしれない。その上で、学校側から生徒全員にプライバシーに関する資料とかを配布してもらって、盗撮が犯罪行為であることをハッキリと知らせるの。それでも続くのであれば、外部の人間の線が濃いと考えて警察に連絡するしかないわね。もしそれで、生徒が犯人だったとしても……自業自得ね」

彼女は眉根をつり上げて、強い調子で答えて言った。握っているカメラを押し潰さんとばかりに、手に力を込めているのが手のひらの変色ぶりが分かる。話す態度はいつも通り落ち着いていたが、心の中は強い怒りが込められていることが見てとれる。自分も被害者になりかけた、という事実もあるだろうが、恐らく根底にあるのは、〝同じ女性を傷付ける者は許さない〟というのがあるかもしれない。
昔から彼女はそうだった。人に優しく、自分に厳しく、責任感もあり、一度決めたことは納得いくまでやり通す(それでいてカッコいい)。まさに大人の女性の鏡ともいえる存在。そんな彼女が保健の教諭として学校内で好意的に受け入れられる(主に生徒に)のは当然のことだ。
だからこそ、以前の桃瀬さんの一件のときも、率先して手を貸してくれたのかも。似た者同士として。
ーーだけど。

「……矢行先生、だったら一つ提案なんですけどもーー」

矢行先生は、やはりほんの少し冷静さを欠いている。でなければ、〝ある可能性〟に僕だけしか気付かないわけない。
僕は万が一の可能性に備え、今更ながら他の誰にも聞こえないように、耳打ちのような静かなトーンで言った。

「むしろ今、このことは誰にも話さない方がいいんじゃないでしょうか?」

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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