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《18》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻」 (4)―3 距離

「ファ〜ア〜ア……」

僕は眠い目を擦りながら廊下を歩いていた。大きなあくびで、瞳が僅かに潤う。

「築月先生、緊張感を持って下さい」

隣から棘のある声に刺され、慌てて僕は口元を覆う。隣では、出席名簿を抱えたスーツ姿の女性が眼鏡をクイと、直していた。

「分かってると思いますが、桃瀬さんは何とか登校しているそうです。しかし、やはり元気がないとか。彼女へのケアは同じ〝女性〟である私がしますので、それ以外のことは築月先生にお任せします」

職員室にて、朝礼前に伊庭先生と打ち合わせを始めたのが十分前。
話によると桃瀬は無事学校に来ているらしい。しかしあれだけ醜態を晒してしまった以上、今まで通りは振る舞えないはず。彼女への配慮は自分が請け負いますので、他の生徒(主に男子)が彼女へ攻撃しないように目を光らせておくように、と命令されたのが七分前。
他の先生方に、しっかりしろと笑われたのが五分前のことだ。
これ以上彼女を怒らせないように、僕は作り笑いを振りまきながら教室の扉を開けた。

「起立!!」

扉の音が合図のように、元気な女の子の声が教室に響き渡った。

(桃瀬…………)

僕はその声の主の方である、委員長に顔を向ける。彼女は背筋をピンと伸ばし、キリッとした表情を他の生徒同様自分に向けていた。

「礼、着席!!」

自分への挨拶を済ませると、事務的な動きで椅子に座る。いつも通りの朝の風景。
しかし、その日は何かが違っていた。

(あ…………)

教壇に立って初めて気付いた。
桃瀬の周りだけ〝空間〟が出来ていたのだ。
黒板に向けて生徒の机が一定の間隔で列ごとに並んでいる配置。しかしその中心、つまり桃瀬のみ周りの机から距離をとられていたのだ。
床のタイルの不自然な光は消えていたが、その光景に昨日の出来事がフラッシュバックする。

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プロフィール

Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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