短編小説《1》・神様この人でしょうか?(3)
- 2017/02/13
- 10:10
買い物開始から一時間弱。まだ事務用品コーナーしか回れていなかったが、中田をオトすチャンスは何度かあった。
真紀は目的の品を選ぶ際、出来るだけ下の棚の商品から選んだ。当然しゃがみこんでいるため、フレアスカートの裾はずり上がりニーハイの先の太腿が露わになる。綺麗な脚だと、同姓からも何度も褒められているのだ。自分でも惚れ惚れする美しさに、どうだという顔で中田を見上げだ。
真紀の量感のある太腿に、彼の目線は注がれーーてはいなかった。
「はい、そのUSBメモリを五つでしたね。では、次に行きましょうか」
目的の物をカゴに入れると、メモ用紙を見ながら隣の列の棚へと向かっていった。
◆◆
脚には興味ないと判断し、次はもう少し攻めることにした。真紀は脚もそうだが、上半身にも自信があるのだ。同姓から遊び半分で触られたことも一度や二度ではない、形の良いバスト。
白いブラウスは彼女のナイスバディを強調するのにひと役買っている。
商品棚の一番上に置かれた大きなフロアケースを、真紀は背伸びをして取ろうとした。
「……キャッ」
これまたわざとらしく、女の子っぽい悲鳴を上げながら中田のガッチリした胸板目掛け、後ろ向きに寄りかかった。
真紀は首だけ動かし、中田に感謝を述べると目線を合わせた。中田はキョトンとした目で真紀を眺めている。それを確認すると、
「ちょっと無理し過ぎたかな……ちょっと目眩が……」
真紀は中田の方へ向き直り、思いっきりへばりついた。へばりつくということは、色んなものが押し付けられるということで。特にセーターごしの二つの膨らみが。
周りにいた数人の客が、気まずそうにそそくさと去っていくのに気付いた。真紀は気恥ずかしそうに振る舞う。今度こそーー。
「立ちくらみですね。少し休憩しましょうか」
努めて冷静に判断し、真紀を近くのベンチへと誘った。真紀は唖然としながら、ベンチの上で頭を抱えるしかなかった。
(何で、何でよ!? 何でアイツ何の反応も見せないのよ!)
後は自分が買ってきますので、真紀さんはこちらでお待ち下さいと告げ、中田はさっさと歩いて行った。その背中を見ながら、真紀は沸き起こる怒りを必死に抑えていた。
私の魅力にオチない男がいるのは許さない。
天上天下、唯我独尊。真紀の思考回路はショート寸前だった。
(こうなったら、強行手段しかないわね……)
◆◆
そんなこんなで到着したのが、三階の女性ファッションエリア。そして二人が訪れたのは。
「僕はここでお待ちしてましょうか」
「何言ってるの? アンタも着いてくるの」
両手に紙袋を持ち無抵抗の中田の腕を強引に引きずりながら、真紀は「ランジェリーショップ イエロースプラッシュ」の看板を掲げた店へと入った。
真紀も必死だった。こうなりゃ、女の魅力を最大限に活かしてオトしてやる。そして、本気になったコイツを思いっきりフッてやるのだ。「何一日、デートしたくらいで本気になってんの? 馬鹿じゃない?」と。
「ここで待ってなさい、動いちゃ駄目よ」
十分かけて店内に飾られたランジェリーを見て回った。等身大マネキンが着けた艶かしくカラフルな下着類。その中から魅力的なものをいくつか選び、試着室へと移動した。休日だけあって店内の女性の、特に若い娘が多く、中田のことを嫌悪の目で見る者も少なくなかったが、彼は無表情を貫いた。
(待ってなさい、今あなたの頬を真っ赤に染めてやるわ)
閉ざされたカーテンの向こうにいる中田は今どんな顔をしているのだろう。そんなことを考えながら、真紀は下着に着替え数分でカーテンレールを軋ませた。
「ジャア〜ン!! どう、似合う!?」
選んだのは、ローズピンクの胸当てと同じ色のショーツ。腰に手を当て、片足を壁につけて寄りかかり、まるで小悪魔のような笑みを浮かべながら真紀は得意げな態度で尋ねた。
それだけでは飽き足らず、バストを両手で寄せた、いわゆる〝乳寄せ〟のポーズもとってみた。その姿に店内にいる客の殆どが見惚れた。一人を除いて。
「ハイ。似合うと思うのですが、真紀さんはどちらかというと、挑発的な物より奥行きのあるお洒落な物の方が似合うと思います。こういった感じの」
そういいながら、籠から上品そうなレースをあしらった下着を取り出した。
「……あ、そう……じゃあ待ってて……」
それだけ言って、真紀はゆっくりとカーテンを閉めた。
真紀は目的の品を選ぶ際、出来るだけ下の棚の商品から選んだ。当然しゃがみこんでいるため、フレアスカートの裾はずり上がりニーハイの先の太腿が露わになる。綺麗な脚だと、同姓からも何度も褒められているのだ。自分でも惚れ惚れする美しさに、どうだという顔で中田を見上げだ。
真紀の量感のある太腿に、彼の目線は注がれーーてはいなかった。
「はい、そのUSBメモリを五つでしたね。では、次に行きましょうか」
目的の物をカゴに入れると、メモ用紙を見ながら隣の列の棚へと向かっていった。
◆◆
脚には興味ないと判断し、次はもう少し攻めることにした。真紀は脚もそうだが、上半身にも自信があるのだ。同姓から遊び半分で触られたことも一度や二度ではない、形の良いバスト。
白いブラウスは彼女のナイスバディを強調するのにひと役買っている。
商品棚の一番上に置かれた大きなフロアケースを、真紀は背伸びをして取ろうとした。
「……キャッ」
これまたわざとらしく、女の子っぽい悲鳴を上げながら中田のガッチリした胸板目掛け、後ろ向きに寄りかかった。
真紀は首だけ動かし、中田に感謝を述べると目線を合わせた。中田はキョトンとした目で真紀を眺めている。それを確認すると、
「ちょっと無理し過ぎたかな……ちょっと目眩が……」
真紀は中田の方へ向き直り、思いっきりへばりついた。へばりつくということは、色んなものが押し付けられるということで。特にセーターごしの二つの膨らみが。
周りにいた数人の客が、気まずそうにそそくさと去っていくのに気付いた。真紀は気恥ずかしそうに振る舞う。今度こそーー。
「立ちくらみですね。少し休憩しましょうか」
努めて冷静に判断し、真紀を近くのベンチへと誘った。真紀は唖然としながら、ベンチの上で頭を抱えるしかなかった。
(何で、何でよ!? 何でアイツ何の反応も見せないのよ!)
後は自分が買ってきますので、真紀さんはこちらでお待ち下さいと告げ、中田はさっさと歩いて行った。その背中を見ながら、真紀は沸き起こる怒りを必死に抑えていた。
私の魅力にオチない男がいるのは許さない。
天上天下、唯我独尊。真紀の思考回路はショート寸前だった。
(こうなったら、強行手段しかないわね……)
◆◆
そんなこんなで到着したのが、三階の女性ファッションエリア。そして二人が訪れたのは。
「僕はここでお待ちしてましょうか」
「何言ってるの? アンタも着いてくるの」
両手に紙袋を持ち無抵抗の中田の腕を強引に引きずりながら、真紀は「ランジェリーショップ イエロースプラッシュ」の看板を掲げた店へと入った。
真紀も必死だった。こうなりゃ、女の魅力を最大限に活かしてオトしてやる。そして、本気になったコイツを思いっきりフッてやるのだ。「何一日、デートしたくらいで本気になってんの? 馬鹿じゃない?」と。
「ここで待ってなさい、動いちゃ駄目よ」
十分かけて店内に飾られたランジェリーを見て回った。等身大マネキンが着けた艶かしくカラフルな下着類。その中から魅力的なものをいくつか選び、試着室へと移動した。休日だけあって店内の女性の、特に若い娘が多く、中田のことを嫌悪の目で見る者も少なくなかったが、彼は無表情を貫いた。
(待ってなさい、今あなたの頬を真っ赤に染めてやるわ)
閉ざされたカーテンの向こうにいる中田は今どんな顔をしているのだろう。そんなことを考えながら、真紀は下着に着替え数分でカーテンレールを軋ませた。
「ジャア〜ン!! どう、似合う!?」
選んだのは、ローズピンクの胸当てと同じ色のショーツ。腰に手を当て、片足を壁につけて寄りかかり、まるで小悪魔のような笑みを浮かべながら真紀は得意げな態度で尋ねた。
それだけでは飽き足らず、バストを両手で寄せた、いわゆる〝乳寄せ〟のポーズもとってみた。その姿に店内にいる客の殆どが見惚れた。一人を除いて。
「ハイ。似合うと思うのですが、真紀さんはどちらかというと、挑発的な物より奥行きのあるお洒落な物の方が似合うと思います。こういった感じの」
そういいながら、籠から上品そうなレースをあしらった下着を取り出した。
「……あ、そう……じゃあ待ってて……」
それだけ言って、真紀はゆっくりとカーテンを閉めた。