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短編小説《1》・神様この人でしょうか?(5)

中田を自分に近付かせないため、真紀はとっさに両手を離してしまった。その瞬間、下着の中で待ちきれなかったオシッコが迸った。

ーービシャビシャビシャビシャ……

とうとう崩壊してしまった真紀の股間。悲鳴にも近い叫びと共に、狭い室内で勢いよく噴出されるオシッコのメロディー。下着の吸水限界等余裕で通り越したそれは、万有引力の法則に則り床へと打ち付けられていった。下品な水音が真紀の耳に入る。

「ウソぉ……こんなのウソよぉ……」

真紀の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。自分の失敗を未だ飲み込めない真紀。内股に黄金の水流を垂れ流しながら、フッと意識が飛んでいく。倒れこむ真紀の両腕をギュッと掴み、支えたのは中田だった。
何だよォ、コイツは。こんなときにもクールぶりやがって。もう少しオロオロするか、ビックリするかしなさいよ、バカぁ。
真紀のおもらしはそれから数秒間続いた。

◆◆

ーーピチョーン……ピチョン……

ようやくおもらしの勢いが弱まり、水滴状のオシッコが水たまりに波紋を広げるように落ちる。それから真紀の思考回路が戻るまで数分かかった。

「ウゥ……ウぐぅ……ウクぐぅ〜……」

真紀は中田に支えられたまま、再び嗚咽を始めた。そのとき真紀の脳内は絶望で埋め尽くされていたのだ。
何だよ、何だよコレ。
おもらしって。
オシッコおもらしって。
25歳にもなっておもらしって。
今まで「カワイイ」や「美人」という言葉で埋め尽くされてきた自分の人生に、初めて蔑まれる言葉が加わってしまった瞬間だった。
脱力してヘナヘナと座り込もうとした真紀の身体を、中田が支え直した。

「真紀さん、こっちに来れますか」

それまで黙って様子を眺めていた中田だったが、重い口を開きながら真紀に動くよう促した。

「離せ……離しなさいよ!……ッ! 馬鹿!!」

真紀は中田の手を振り解こうとしたが、所詮は女の力である。中田が手首をギュッと握ると、真紀は押し黙るしかなかった。

「さ、こっちへ」

観念した真紀は、先程まで中田が立っていた階数ボタンの前に移動させられた。しかし、素早く歩くことが出来ず、まるで老人介護のような状態で。

(恥ず……)

真紀は移動して、自分の失態の跡をありありと見せ付けられることになった。床に広がる黄色い水たまり。それは、自分の太腿にまとわりつく水滴と同じ色をしていた。
その名はオシッコ。自分のオシッコ。
そうか、分かった。
中田は自分にこの惨状を見せ付けたかったのだ。自分の失敗を改めて認識させ、私を赤面させ、絶望に打ちひしがれているとこに『知られたくなかったら、どうすればいいか分かるよな』と言い放つつもりなのだ。
しかし、真紀にはもうどうでも良かった。
というか、何かもう笑えてきたのだ。
誰もが惹かれる会社一の美人OLがおもらしって。それってどんなAVだよ。
虚構と現実は全然違う。興奮するのは一部のマニアックな男共だけ。気持ち悪がられて当然なのだ。
この失態が会社に知られる
→噂は一日で知られる
→みんなから冷ややかな目で見られる
→会社を辞めざるをえない
→再就職は厳しい
→パートのオバちゃんの仲間入り。
フフ。フフフフ。そうか、それが私の人生か。こんなおもらし女には丁度いいかもね。
アハハ。アハハハ。ガサゴソ。ガサゴソ。
目の焦点が合わぬまま、渇いた笑いを発する真紀をヨソに、中田は紙袋の中からあるものを取り出した。真紀に近付き、それを差し出す。
何だよ、ハンカチかよ。同情なんていらないよ。
跳ね除けようと思った真紀だが、それはハンカチではなかった。

「デパートの人が来る前に後片付けをします。真紀さんは早くそれに着替えて下さい」

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プロフィール

Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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