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《20》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻」 (4)―5 振舞

本日一時間目の授業終了後、いまいち調子が出ず鬱々としながら黒板の文字を消す僕の元に、彼女が声をかけてきたのだ。

(あの……二人っきりでお話ししたいことがありますので……昼食のお時間、頂いてもよろしいですか?)

何故かほんのり頬を染めて。
一瞬何かのロマンス的なことを頭に浮かべたが、彼女がチラリと目を向けたのは暗い表情で教室を出て行く桃瀬だった。
それを見て、彼女は桃瀬のことで何か話があるのだと察し僕は首を縦に振った。

「すみません、お忙しいのにお時間頂いて」

僕が椅子に座ると、彼女はその向かいに腰を下ろした。

「あ……」

「どうした?」

彼女の目線の先には、僕がテーブルの上に置いたピンクのナフキンに包まれた弁当BOX。

「それ……彼女さんからですか?」

そう言ってから彼女の方を見たものの、既に顔をうつむけてしまっていた。内気な女の子でも、多感な時期であることに変わりない。やはりこういう話には興味があるのか。

「イヤ、違うよ。私には姉がいてね、一緒に住んでるんだ。それより、そんなに堅くならなくてもいいんだよ」

今は授業時間ではないが担任と生徒である以上、僕は堂々と振る舞う。

「それで、どうしたの? 私に話があるんだろう?」

威厳を残したつもりで、僕は努めて自然な調子で彼女に尋ねた。

「ハイ……クミちゃんのことで……」

彼女は声のトーンを落としながら、おずおずと口を開いた。やはりか。

「クミちゃん……桃瀬さん、いつも通り元気な声で私に挨拶してくれたんです。でも、やっぱりいつもと違ってて……」

彼女は辛そうな表情をしながら淡々と話す。
大丈夫なわけがない。無理にでも普段通りに振るまっているのだろう。その理由はおそらく、『高校生だから』『委員長だから』か。

「クミちゃんは、何事もなかったかのようにいつも通りに振る舞おうとしてました。でも、みんなはそうじゃありませんでした……みんな、よそよそしいというか、出来る限り避けてる感じなんです。そしたら私、聞いちゃったんです。桃瀬さんが教室を出て行くと、桃瀬さんのことを面白おかしく話して……みんなで悪口を――」

残念ながら矢行先生の予想は当たってしまったようだ。しかし、彼女のように心配してくれる同級生がいるのは救いだ。
ももせらくみ。だから〝クミちゃん〟か。

「クミちゃんがかわいそう。クミちゃんは今まで通り接してるのに……みんなが……」

「分かった。教えてくれてありがとう、先生も注意しておく。でも、田代だけか? 桃瀬のことを心配しているのは?」

心のケアは伊庭先生に任せて、僕は他の生徒への対応だ。

「いえ、女の子は私を含めた何人かも……でも、やっぱり冷やかす人や無視する人の方が圧倒的に多いです。男子なんてほぼ全員で――いえ、上山(かみやま)君くらいですかね……」

「上山君が……?」

「ハイ……あの二人、付き合ってるんです。あ、先生は知りませんでしたか?」

上山健二郎(かみやまけんじろう)。隣の1―2クラスの委員長件、漆金高校生徒会執行部の会長もつとめる学年一の秀才。スポーツ全般を得意としている上に、くっきりした目鼻立ちは多くの女子生徒から憧れの眼差しを集める。
よく廊下を二人で並んで歩いているところを見たが、まさかそういう仲だったとは。

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Re: お弁当を包むのは

> ナフキンまたはランチクロスではないですか?

ご指摘ありがとうございました。
自分の脳内が汚れていることに気付きました笑

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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