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《26》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」 (5)―5 悲鳴

息も絶え絶えに1ー3組まで辿り着いたが、直ぐには教室に入れなかった。クラスの前に生徒達による人だかりが出来ていたのだ。同じ階の一年生の生徒だけではなく、二年・三年の生徒も何人かおり、皆クラスの中を覗き見ようと躍起になっている様子だった。中にはスマホを取り出し、カメラ機能を作動している生徒もいた。

「コラ、どきなさい!! 自分の教室に戻りなさい!! どいて!!」

伊庭先生は生徒達の波を掻き分けるように教室へと入った。僕も後に続いた。そこには。

「――――!!」

「何よ、これ……」

教室の中心で一人の生徒が――桃瀬だった――苦悶の表情を浮かべなから、仰向けに倒れ込んでいた。そして彼女の肩を抱き抱え、僕に悲痛な目を向ける田代さん。他に教室にいたのは、生徒が十人程度。残りの生徒は、重苦しい空気を感じ取ったのか、野次馬に紛れて廊下からこちらの様子を見ている。
彼らの視線は、教室の正面の壁面に取り付けられている黒板へと注がれていた。

「〝おもらし ラクミ〟……?」

黒板にデカデカと、チョークではっきりとそう書かれていた。いくつもの色を重ね太さを強調しており、周りには〝排泄女〟や〝便所娘〟といった、誰が見ても陰湿と分かる言葉がいくつも書き殴られていた。彼女をモチーフにしたであろう女の子が粗相をしているイラストもある。

「先生……」

田代さんは桃瀬を抱き抱えながら、悲鳴にも似た声を上げる。恐らく彼女らは僕らよりも先にこれを見たのだ。
昨日僕のまえで大見得を切ったとはいえ、桃瀬もどこにでもいる普通の女の子。ただでさえ憔悴し弱っている気持ちを、もはや意地とプライドだけで保たせている彼女がこんなものを見たらどうなるのか。
僕は田代さんと目を合わせた後、倒れ込んだ桃瀬を見た。閉じた瞼からは、涙が一筋垂れて頬を伝っている。
状況が把握出来てくると、沢山の音が耳に入ってくる。思い思いに騒ぎながら好奇の目をこちらに向ける他クラスの生徒達、群衆の中から聞こえる無機質なシャッター音、そして子供達の声に混じって年季の入った大人の声が混じる。

「築月先生!?  これは一体どういう――」

ガンッッ!!!!

少しふくよかな体を揺らしながら教室に入ってきた女性は、岡(おか)教頭である。黒板の惨状を見るなり、ヒッと信じられないモノを見たような声を上げたが、直ぐに僕に声をかけた。しかし、今の僕にはそんな声どうでも良かった。
僕は幽霊のようにユラユラと歩き黒板の前に立ち、心無いチョーク文字を正面から見つめた。そして右拳を思いっきり打ち付けた。その衝撃で黒板に貼りついたマグネットや、チョーク置き場に備え付けの黒板消しが音を立てて床に落ちる。
ざわめく群衆、教室の生徒、二人の教師らが声も上げずに愕然とした表情で僕を見つめるのが背中越しに分かった。

「……誰がやった?」

そんなの気にせず正面を向くと、多くの視線が集中していた。だが、僕の目に入ったのは、冷たい床に崩れ落ちた桃瀬。教壇に立って気付いたが、彼女が倒れている床は一週間程前に恥ずかしい水たまりをつくってしまった場所じゃないか。
誰だ。過去のしくじりを掘り起こし、決意を固めた彼女の心を抉るようなマネをするようなヤツは――。

「言え!! 誰がやったぁッ!!!!」

右手が悲鳴を上げ、痛みがジンジンと襲ってくる。それがどうした。大したことない。彼女の受けた心の傷に比べれば。
廊下からドスドスと足音を響かせながら、校長先生の声が聞こえた気がした。

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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