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《32》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」 (6)ー5 不良

人の心は決して分かりあえるものではないと良く言うが、それならどうやって人の心を掴めばいい?
人間は本音と建前で生きている。自分のこの気持ちすらも、もしかしたら本音ではないのかもしれない。本人も自分の気持ちが分からないなら、他人がどうして分かるのか? 身体も心も傷付き、何が正しくて何が間違っているのか分からない不安定な状態の彼女の本心はどこにあるのか? 誰が知っているのか? 友達? 恋人? それとも、やっぱり自分?
ーーマズい。また自分の悪い癖が出ている。一度考え事を始めると、周りが見えなくなってしまい気付かぬうちに何刻も時が過ぎ行く。十分、二十分は当たり前。酷いときには一時間なんてこともあった。
職員室に戻ろう。ひとまず明日の授業の準備を。

『……でさ……し……』

そのとき、耳に複数の若者の声が入ってきた。徐々にこちらに近付いてくる、こんな時間にこんな場所に来るなんて。
嫌な予感がした。こういうときの勘は大体当たる。僕は思わず校舎の陰に身を隠していた。教師なんだから、堂々としていれば良いと思ったが、とりあえず様子を見ようと思った。
ぞろぞろと現れたのは、制服に着崩した六人程の生徒達。一人は金髪、一人は長髪、一人は仰々しいシルバーアクセサリーをズボンにぶら下げているーー全て校則違反だ。
何年生かは知らないが、〝六組〟の生徒だろう。
矢行先生の言う、目に見えないいじめが『裏サイト』ならば、見に見えるいじめは『学園ヒエラルキー』のこと。成績上位グループが下位グループのものを、差別・見下す風潮がこの高校にはある。
事実どの学年も基本的に1・2組に在籍する生徒は、教員から絶大な特権と支持を得ており、教頭も彼らを贔屓目にしているところがあった。しかし、5・6組ともなってくると最下層に位置付けられ、上位の生徒は蔑視や嘲笑の的となってしまい、教師や保護者からも偏見を抱かれるとか。
この風潮に校長は頭を抱えていたが、教頭は「生徒達のやる気の後押しになる」「格差社会を覚える合理的なよい仕組み」と黙認しているとか。結果的に、その仕組みのせいで伝統校にはあってはならない「不良」というグループを生み出していることを彼女は分かっているのだろうか。

「いや〜、今日も授業キツかったなぁ〜」
「ーーっつても、聞いてないけどなぁ!!」
「そうそう! 今から取り返そうなんてムリムリ!!」

彼らは先程まで僕がいたところに座り込み、ざわざわと会話をし始めた。よく見ると手にはタバコを持っている。
彼らも、元々は夢と希望を持ってこの学園に来たはず。しかし、この学校の勉教のレベルと早さに着いていけず、自堕落な道へと走ってしまった彼らを隔離するかのように編成したのが、1ー6組だとも聞く。
そんな彼らを立ち直らせる指導をするのが、本来教師の在り方のはずだ。しかし、教頭先生は彼らのことを「怠け者」と口癖のように差別している。
もし僕が彼らの担任になったら彼らを更生できるだろうか。青春ドラマでよくありそうな展開だが、僕には自信がない。だって、今直面している問題すら解決の兆しが立っていないのだから。

「オー! 来たかー!!」

一際大きな笑い声が上がる。どうやらグループに新参者が現れたようだ。僕は職員室に行こうと思ったが、その声につられてまじまじと眺めてしまいーー信じられないものを見てしまった。
不良達の輪に加わり、会い慣れているといった調子で不良達から受け取ったタバコに火を付け、口に咥える男に見覚えがあった。
だって彼とは、〝昨日〟会っているから。

「…………上山?」

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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