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《41》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(8)―2 秘密

「だってぇ〜ウチのタロー先生が、朝から女の子に秘密の告白をされてるっぽいんだよ〜。しかも、相手はクミちゃんだよ〜。話を聞かないわけにはいかないよ〜」

キラキラ瞳を輝かせながら、キャーと甲高い悲鳴を上げ続ける木下さん。何というかまぁ……噂好きというか、人の色恋話が好きなのだ。彼女は。それでいて、子供っぽい身体付きを気にしているらしく、僕に何かのシンパシーを感じたのか自分のことを下の名前で「タロー先生」と呼んでくる。

「な、告白って……!! 私、そんなことしてませんッ!!」

彼女は驚き半分、焦り半分といった表情でぷんぷん怒る。しかし、本気で激昂しているというわけでもなさそうだった。この触れ合い方からして、木下さんとも仲が良いことを想像させる。まぁ、木下さんは誰とでも仲良くなれそうな性格だから、それほど驚くことでもないが。

それにしても、自分がクラス担任として生徒のことを何も知らなかったことを、ヒシヒシと感じさせる。とにかく、授業に遅れてはいけないということしか頭になく、生徒らと正面から向き合うことをしてこなかった。そのうち慣れるだろうと、タカをくくっていた自分が恥ずかしい。彼女らは少しずつ、でも確かに成長しているというのに。果たして僕は、教師として成長出来ているのだろうか。

「……ね〜? タロー先生! クミちゃんと何の話をしていたんですか〜!?」

「あ……イヤ、別に……私はーーあ、電話だ! ちょっとゴメンね!」

好奇心バリバリの視線を向けられ、思わず話してしまいそうになるが、そんなこと出来るわけがない。タイミング良くスマホが振動してくれて良かった。

今日は何とかして上山を掴まえて、一度話がしたいと思っていたのだ。彼女らには悪いが、ここでくっちゃべっている暇はない。

「あー!! スマホ持ってて、ズルーい!!」

ブーブーと抗議をあげる木下に、先生だって授業中はロッカーの中だよ、と説明し通話ボタンを押す。画面には「矢行先輩」と表示されている。

「矢行先生。おはようございまーー」

「タロウかい、今どこにいる? マズいことになってるぞ!!」

スマホの向こう側の矢行先生は、かなり慌てふためいた様子だった。何しろ僕のことをあだ名ではなく、名前で呼んでいたからだ。

「え、どうしたんですか……こんな朝早くに……?」

「イヤ、それが、昇降口に――え、リンコちゃん? ……校長!?」

そこで通話がプツンと切れた。何があったのかは知らないが、校長先生の前でスマホを出していることは阻かれたのか。恐らく教頭先生も近くにいるのか。とにかく、何かあったことは間違いない。しかも、僕にとって相当良くないことが。
僕は考えるよりも先に走り出していた。背後から木下の声が聞こえたが、今はそれどころじゃない。
職員玄関を通り、職員室にバッグを置き、すぐさま生徒玄関の昇降口へと向かった。廊下ですれ違う生徒の何人かが僕の顔を見て、ヒソヒソと噂を始めたり、ある生徒は遠巻きに眺めたりしていた。
下駄箱へと辿り着くと、昇降口の一部に生徒の人だかりが出来ていた。そこは学校からの連絡や、委員会からのお知らせ、さらに部活・サークルの勧誘チラシ等が貼られている学内掲示板がある辺りだった。そこに何か貼られているのか。しかし、人だかりで何も見えない。

すると、集団の後ろにいた女子生徒が僕に気付き、顔を大きく歪めてすぐに目を逸らしてしまった。それを皮切りに僕に気付いた生徒達が次々と僕の存在を確認すると、まるでモーゼが海を割ったかのごとく生徒らが左右に分かれ道をつくった。まさに、それを〝僕に見せる〟ための如く。

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プロフィール

Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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