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《68》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(12)ー4 脅迫

彼は何かの紙の束のようなものを持っているようだが、文字が細かくて見えない。もう一枚は、持っているものを拡大にして撮ったもの。それでも若干見にくかったが、虫眼鏡を使えば見えるかもしれない。でも、数字が書かれていること、名前の記入欄らしきものがあるのは分かった。その独特な配置。これはまさか。

「彼が試験の内容をカンニングしようとするスクープ写真です。僕はただ、この写真に手紙を添えて彼に送っただけですよ。『こんなことはもう止めなさい』とね」

「……つまり、あなたは知ってたんですか? 上山のカンニングを?」

僕の語気が荒くなる。挑戦的に目が鋭くなった。

「私も知ったのはつい最近ですよ。そう、矢行に言われて、この学園の〝裏サイト〟を調べてましたら、この学園の〝会員制ネット裏掲示板〟というものに辿り着きましてね、念のため一つ一つ確認していたら、その写真が貼られてあったのです。誰が投稿したのかは知りませんが、掲示板内では合成写真扱いされて見向きもされていませんでした。何者かは知りませんが、一度削除されても何度も投稿していたようです。で、それをたまたま僕が見つけたというわけです。あぁご安心下さい、桃瀬さんに関する書き込みは一切無くなってましたよ。今は、上山君の話題で持ち切りです」

何だよそれ。結局、皆の標的が上山に変わっただけじゃないか。そんなの僕は望んでない。それに僕は、学校は失敗するところと大見得を切ったくせに、失敗した結果がこれでは元も子もない。
だが、僕は彼に何も言い返すことが出来なかった。あのとき無我夢中で喋り続けた口が、今では縫い付けられたように閉じられていた。
何とか絞り出せた言葉は、苦し紛れの疑問に過ぎなかった。

「じゃあ、どうして直接渡さなかったのですか? 手紙だなんて……まるで脅迫じゃないでしか」

「これまた人聞きの悪い。言ったでしょ、彼の父親は有力議員だと。聞くところでは今の教育委員会にも口がきくとか。当然、我が学園にもね。下手したら、私の教師キャリアに影響が出る可能性もありました。しかし、教師として見過ごすことは出来ないと思い、手紙という形で忠告することにしたのですよ」

それで全ての合点がいった。
恐らく上山は限界だったのだ。周りの期待に答えるため、自身を偽り続け、果ては不正を働き続けることに。もしかして、卑怯な手を使って桃瀬さんを手に入れたことにも罪悪感があったのか(ひょっとして、裏庭で見たあの姿も、周りに合わせるための演技だったのかも)。
そんな中、自分がカンニングしようとしている瞬間の写真なんて見せられたら、自分の犯した〝これまでの悪事〟が全てバレたのかもと疑心暗鬼に陥る。しかし、それが誰にかも分からない。
そんな中、皆の見ている前で利尿剤のことを指摘されてしまった。多少訝しむ人はいても、全てを知られることはないはず。しかし、上山にとっては十分すぎる決定打となったわけだ。
つまりーー引き金をひいたのは僕ということになってしまう。だから、指導室で彼は押し黙ってしまったのかも。僕へのささやかな復讐、〝僕が喋らずとも、全て知ってるだろう〟という意思表示。

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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