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《6》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻」 (2)ー1 崩壊

(…………)

廊下での僕達の会話はなかった。
当然だ。高校生にもなって、オシッコに間に合わなかった彼女に、何て声をかけてあげればいい?
彼女の頭の中はきっと絶望と後悔で埋め尽くされているはず――そんな彼女に、虚勢を張っているだけの頼りない担任の俺はどんな声をかけてあげられる?
桃瀬は泣き止んではいるが、僕と目を合わせようとせず、真っ赤な顔で下を向いていた。こんなときの対処法、実習中にちゃんと聞いておけば良かった……と後悔しても遅い。
気付けば、僕達は一階の端にある保健室の前に着いていた。

「失礼します、矢行先生いますか?」

僕はノックをして、養護教諭の矢行翔(やぎょうしょう)先生を呼ぶ。
彼女は元・体育教師だ。授業・生活指導こそ厳しいが、サバサバした性格で生徒からは慕われている。さらに〝怜悧で美人〟という言葉は彼女のためにあるのでは、というくらいルックスが良い。生徒だけでなく、僕らのような教諭の中にも憧れている人は多いとか。彼女に任せておけば大丈夫だろう、そう思ったのだが返事がない。
もう一度ノックをしたが、沈黙は変わらず。仕方ないからそのままドアを開くと、そこには誰もいなかった。中に入って見渡したが変わらず。
まさか授業中とか?  そういえば、今日は一人出張に行っている体育教師がいたな。まさか、その埋め合わせとか。

「……先生」

僕の背後に立つ桃瀬が、虫の息のごとくか細い声で呼んだ。

「私、一人で大丈夫ですから……」

桃瀬は顔を俯けたまま僕にそう言った。

「クラスに戻って、授業を続けて下さい。私、一人で出来ますから……」

彼女は無理をしている。職員の中で「ルーキー君」とあだ名される僕の目で見ても、それは分かった。本人は気丈に振る舞っているつもりかもしれないが、手足と声は震え、顔面蒼白、おまけに歩き方がぎこちない。恐らくおもらしの感触にまだ慣れないのだろう。

「え、でも……」

「わ、私、委員長ですし……これ以上迷惑はかけたくありませんし、それに、もう……高校生です……から……」

今の彼女を支えているのは〝高校生〟と〝委員長〟という肩書き二つだろう。大人の一歩手前と呼ばれる義務教育最後の時期。おまけにクラス代表ともなれば、他人よりもしっかりしなければ。
しかし、今の状況は彼女自身が自らの失態で生み出したものだ。逆に言えば、高校生にもなって。クラス委員長でありながら。

「高校生ですから……高校生ですから……ウゥ……ウゥゥ……」

言いながらそれに気付いたのだろう。
高校生にもなっておもらし。
委員長なのにおもらし。
トイレに行きたいと言えずにおもらし。
気恥ずかしさから、我慢に我慢を重ねたおもらし。
授業を中断させて皆に迷惑をかけてしまったおもらし。
全て自分が悪い。

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Author:屈辱の湖
周りと違う僕はおかしいのだろうか。
こんな性癖誰にも理解されないのではないか。
どうやって新しいオカズを手に入れればいいのか。
分からぬまま悶々と欲望を募らせていましたがーーとうとう見つけました。僕のたぎる思いを満たすことが出来るのは、

〝少女のおもらし〟だと。

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