《89》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(2)-3 苦手
- 2017/07/07
- 23:26
◆◆ドス黒い雲が天を覆い、そこから降り続ける雨は徐々に勢いを失ってはいる。しかし、大雨であることは変わりなく、僕らは施設入口の雨避けの屋根の下にいた。数メートル先には、存在感のある高そうな黒い車が停められており、その前に運転手らしき白髪の老人が傘を手に立っていた。「じゃあ、私はこれで。太郎君、君に会えて良かったよ。例の話、前向きに検討してくれたまえよ」それだけ言うと、築月氏は目で運転手の老人に合図を...
《88》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(2)-2 息子
- 2017/06/26
- 00:58
「何か?」「イヤ、賢そうな顔立ちをしていると思っていたが、その年で席次の位置や順番まで身に付けているとはね、フフフ……」そう中西さんに返事をすると、彼は机に置かれた書類らしき紙を手に取り一通り眺めた後、僕の目を見つめた。「さて、太郎君。君について少し調べさせてもらったよ。〝幼くして天涯孤独の身となり、施設でも一人浮いた存在、しかし成績は学年で二位と優秀、年齢の割にどこか落ち着いたところがある〟……と」...
《87》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(2)ー1 孤独
- 2017/06/25
- 00:24
僕はどこにでもいる普通の子供だった。普通に両親が恋をし、普通に結婚をし、普通にこの世に生を受け、それまで過ごしてきた。状況が一変したのは、僕が小学校に入る少し前。交通事故で母親が死亡したのだ。助手席に座っていた母は即死、運転席でハンドルを握っていた父は意識不明の重体、後部座席に座っていた僕だけが奇跡的に命に別状はなかった。さらに悪いことは続く。当時は子供だからと詳しいことは何も教えてもらえなかった...
《86》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(1)ー10 神様
- 2017/06/24
- 00:38
「……太郎?」続きが気になる彼女は、口を詰まらせた僕に首を傾げたが、僕は無理やり話題を変えることにした。「……イヤ、それよりも早く朝ごはん作ってよ。お腹空いちゃったよ」シミ姉は、思い出したようにキッチンと向かい合った。良かった、何とか誤魔化せたようだ。安堵の溜息を吐きながら、僕は椅子に身を預けるように座った。しかし、シミ姉の話はまだ終わっていなかったようである。「それよりさ、太郎……いつにする? その……...
《85》【僕のジョボ女簿日誌】 「第二話 姉弟・接吻(シスター・キス)」(1)ー9 荒療
- 2017/06/23
- 00:44
無理にでも明るく振舞おう、そんな気持ちがだだ漏れの作り笑顔。心が痛いほどギュッと締め付けられる。もういい。やめてよシミ姉。僕はそんなこと言ってないし、思ってもない。「姉さん、そんなことよりも早く着替えよう? お腹も空いたし、朝ご飯作ってよ」こんなのイヤだ。少しでも空気を変えたくて、僕はそんなことを口にした。気付くと起きてから一時間以上空いていた色々あったがさすがに空腹はごまかしきれない。あまり懸命...