《23》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」 (5)―2 見守
- 2017/03/02
- 11:57
彼女は小さな肩を震わせ、目元の涙を袖で拭う。その姿に、いつもの〝委員長〟としての威厳はなかった。目の前の不安と恐怖に心を砕かれた、一人のか弱い女の子・桃瀬来久美がそこに立っていた。「先生、気付いてますよね? 私、ここ最近休み時間になるとまずトイレに行くんです、不安だから……。でも、この前すれ違う男子の一人が、私のことを〝頻尿女〟って呼んだんです……」その一言に僕は怒りを覚えた。ただでさえ、かなりのレベ...
《22》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」 (5)―1 健全
- 2017/03/01
- 23:27
「あ……」大きな貯水タンクの裏手は畳二畳程の空間があり、そこで二人の男女が抱き合いながら口付けを交わしていた。桃瀬が先に僕に気付き、驚いた顔で上山と距離を取った。彼は僕に気付かれても平然としていた。「これはこれは、築月先生。確か彼女……桃瀬の担任でしたよね? すいません、彼女とお付き合いさせて頂いている2組の上山です」彼は僕に、恭しい顔付きでお辞儀をしてみせた。桃瀬は顔を真っ赤にして俯いている。「あぁ...
《21》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻」 (4)―6 拠所
- 2017/02/25
- 01:25
「同じ委員会になったときに、クミちゃんを好きになったそうです。最初は正直困ってました、クミちゃんまだ男の子と付き合うとか、そういうこと考えてなかった感じだったので。家のこともあるし……」それは、桃瀬の両親が今海外にいることを言っているのか。周りの人間からすれば羨ましい話に聞こえるかもしれないが、当人には当人にしか分からない問題もあるのかも。「それでもクミちゃんは、〝自分のことを好きと言ってくれる人の...
《20》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻」 (4)―5 振舞
- 2017/02/23
- 21:12
本日一時間目の授業終了後、いまいち調子が出ず鬱々としながら黒板の文字を消す僕の元に、彼女が声をかけてきたのだ。(あの……二人っきりでお話ししたいことがありますので……昼食のお時間、頂いてもよろしいですか?)何故かほんのり頬を染めて。一瞬何かのロマンス的なことを頭に浮かべたが、彼女がチラリと目を向けたのは暗い表情で教室を出て行く桃瀬だった。それを見て、彼女は桃瀬のことで何か話があるのだと察し僕は首を縦に...
《19》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻」 (4)―4 素朴
- 2017/02/02
- 13:13
「先生」伊庭先生に声をかけられ、僕は現実に戻ってきた。マズい。担任である自分までこれでは、生徒に示しがつかない。いつも通り、いつも通り自然に接しなければ。「あ〜……ゴメンね! ちょっと寝不足で……え〜と……皆おはよう!! じゃあ、ホームルームを始めます! ……あ、いや、その前に伝えたいことが……じゃなくて! その前にプリント配らないと! ……ハハハーー」全く自然に振る舞えていなかった。◆◆四時間目終了のチャイムを...