《66》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(12)ー2 薄桃
- 2017/05/08
- 00:14
そういう問題ではないのでは。というか、また写真でも撮られたりしたら……。しばらくして僕からスッと離れると「泣いてるの?」と聞かれた。どうやら、今になって怖くなってきたようだ。大勢の前で一人で喋ったり、もしかしたら教員免許を剥奪されるかもしれないという恐怖から解放されたこともあるのだ。そんな僕の前に、矢行先輩はスッと薄ピンクの布を差し出してきた。僕はありがたくそれを受け取り、目元を拭った。そこで気付い...
《65》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(12)ー1 未来
- 2017/05/07
- 15:29
集会が長く感じたせいか、一日が終わるのがとても短く感じた。全校集会が終わった後(とても集会といえるものではなかったが)校長先生の支持の元、生徒は皆教室へ、教師は職員室へと移動した。しかし、僕だけは来賓室へと呼ばれた。PTA会長の関町様から話があるとのことだった。高級そうなソファーに座っていたのは、これまた高級そうな着物に身を包んだ上品そうなご婦人。やはり、テレビに映る人は普段から佇まいを徹底してい...
《64》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(11)ー6 有無
- 2017/05/07
- 14:00
名前も知らぬその生徒は、獲物を見つけたトラの目のごとく鋭い眼光を見せながら笑った。その周りの取り巻きらも、戸惑いながらも同調するように頷いている。むしろ戸惑っていたのは、彼らの前に立ち塞がっていた教師らの方だった。「ハハハハ……いい気になるなよ、築月ィ……」今度は別の方向から声が上がった。自虐るような笑い声を上げながら、両腕を男性教員に取り押さえられている生徒会長・上山だった。整えられたその髪は、強風...
《63》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(11)ー5 空気
- 2017/05/06
- 14:18
自分の顔が熱くなるのを感じた。だって彼女はまだ学生、しかも教え子だ。その彼女を美しいだなんて。自分の担当クラスの生徒の反応は見たくない。ていうか、見れない。「私は自分が教師として優れているとは思いません。むしろ失格だと思います。今日だけじゃなく、以前も彼女が苦しんでいるのに気付いてあげられなかったから。彼女が疎外されていても察せられなかった。どうしてでしょうか? それは、僕が〝大人〟になってしまっ...
《62》【僕のジョボ女簿日誌】 「第一話 学園(エデン)は檻の中」(11)ー4 失敗
- 2017/05/06
- 02:16
あらかじめ台本が用意されていたような長い台詞をスラスラと喋り終えると、彼はキツく結ばれた唇を緩ませクスクスと笑みを浮かべた。しかし、それはとても幸せを感じるものではなかった。まるでこの状況を楽しんでいるかのような、見てる僕が身震いする笑い声。普段笑わない人が笑うと怖いって、本当だったのか。そんな僕にお構い無しに、彼は左手に握ったものを差し出してきた。「矢行先生から渡されました。〝あなたには、この場...